第1回 水土一体と三焦

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第1回
水土一体と三焦

松本 岐子

 

鍼灸界の風雲児であるキャプテン岐子が
風門からの風を受けて尿(いばり)川を航行。
その先には宝物が隠された光の渦が!

水土一体の思想

乾いた土だけでは生命は誕生しない。そして水だけでも生命は短くしか生きられない。水と土でできるもの、それは泥(どろ)である。
中国の祖先神、伏義と女媧。兄妹との伝説もあり、大洪水後に残った二人が結婚し人類を繁殖させたともいわれ、後漢の時代の画像石(石墓の壁画)にも、人類の祖先神としてのイメージが表現されている。

※図2枚とも山東省の武梁祠石室画像石の拓本(後漢2世紀頃)。

(上図の下段に女媧と伏羲)

しかしながら、女媧と伏羲の祖先神神話は、民間伝承としての言い伝えであり、古書に於いては二人はほとんど単独で記述されており、伏羲は天地の理を理解して八卦(つまり自然界)を創ったとあるが生命は創っていない。人間の生命を創ったのは女媧である。北宋の時代(10世紀)に著された百科事典である「太平御覧」の以下の文章を見られたい。
『風俗通曰く、俗說に、天地開闢して未だ人民有らず。女媧黄土を摶(まる)めて人を作る。劇務にして力を供する暇なく、乃ち絚(こう)泥中に縄をひき、挙げて以って人と為す。故に富貴なる者は黄土の人なり。貧賤凡庸なる者は絚人なり。』

「風俗通に曰く、俗説によると、天地が開闢した時、人がまだいなかったので、女媧が黄土をまるめて人を造った。作業が大変だったので、力を費やす時間がなく、大縄を泥の中に入れ引き上げて人を造った。それで、黄土をまるめて造った人間は貴人であり、大縄を泥に入れて引き上げて造った人間は貧賤で凡庸な人である。」

風俗通(義)とは後漢の応劭(おうしょう、2〜3世紀の人)の著作で、現在一部しか残っていない。この神話によれば、土の質や作業による貴賤の違いは別として、人間の生命を創ったのは女媧である。女媧は「泥」から人間を創った。というか、人間の“元”を創った。そして「泥」は「水土一体」。

では女媧の作った人間の“元”とは?

それは「腎臓」だと思われる。
人の背部の腎臓エリアの外側上部は、土である脾兪と胃兪が位置し、外側下部は水である腎兪が位置している。ここで泥が作られ人の“元”になる。
では泥(粘土)はその後どうなったのか?どうやって人間になったのか?